雨の飛行機 |
そういえばついこの間までカフェに入り浸っていたのだが、次々と旧知の人たちが揃う夕暮れがあり、数年ぶりにノリで「橋エチュード」をした。
橋エチュードというのは、演劇部がよくやるトレーニングのようなもので、2人で行う。「一本橋」とも呼ばれる。それぞれ「橋を渡りたい人」・「渡らせたくない人」に分かれ、架空の橋の上で出くわしたふたりはあらゆる手段で己の目的を達成しようとする。
なんで橋を渡りたいか/渡らせたくないか。動機はエチュード参加者に一任されており、お互い橋の上で出くわすまで知らされない。「橋の上」という設定上、フィジカルで強行突破ともいかず(回り込めば川に落ちる)、あくまで対話が必要だ。自分と相手の急ごしらえの設定をすり合わせてアドリブで会話を進めなければならない。
私が橋を渡りたいほうだったので、「総選挙の結果発表に遅刻してドームに急いでいるアイドル」ということにした。相手はカオスという名の友人で、「私が一歩進むたびに右肩外れていくのでまじで進むな」と言ってきた。そのうえ彼女は画家で、実際に進んでみると右腕を抑えて「腕が取れる」と激しく痛がった。
私は、右腕が実際に取れたときの治療費はお支払いするし、逆境を乗り越えてがんばってほしい。私が総選挙1位になった暁には、スーパーアイドルとしてあなたに希望を取り戻すから…などとむちゃくちゃ言ったが、最終的にナアナアで終わった。エチュードはいつまでたっても難しい。
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昨日は結局、羽田空港で雨の日の展望デッキを眺めたりした。第1ターミナル(国内線)、第2ターミナル(国内線)、国際線ターミナルとあるのだが、その全てに展望デッキがあり、ネットを見てもどれが一番いいかピンとこなかったので結局全部行った。結果的に第2ターミナルが離陸をたくさん見れてよかった。
突如として豪雨となったが、外に出るタイミングで止んでくれて、第2ターミナルの屋外デッキで立ちながらコーヒーと抹茶ドーナツを食べた。でもすぐ降り出したので屋内に移って、22時すぎくらいまでそこにいた。
窓ガラスに雨粒が叩きつけられ、水槽のなかにいるような、水槽の外にいるような気分だった。水のなかみたいにびしょ濡れの世界でも飛行機がびゅんびゅん飛んでいくのを何回も見た。白い光と赤い光を交互に点滅させて、星になりにいくみたいだった。(何年も何年も前に都庁の夜景を見たときにのことを思い出した。星のようになりたいのか、街灯のようになりたいのか、ということをなんか神妙に考え込んでしまったときの。)
「いつだって先の方がいい時代だ」という言葉をけっこう信じているのだけど、誰の言葉でどこで知ったか完全に忘れてしまった。二次創作BLかもしれない。大事なことをだいたい教わっているので…。