草津のパッション |
勢いで…つい勢いで、としか言いようがないのだけれど、めちゃくちゃお洒落なテキストエディタを購入してしまった。有料だ。800円くらいだ。
今、フルスクリーンの背景には美しい海辺の風景が映し出され、イヤホンからはしっとりした音楽とレトロなタイプ音が静かに流れてくる。お洒落だ……お洒落だよ……毎日味噌汁作って飲んでるやつが、いきなりヴィシソワーズに挑戦しちゃったみたいな感じだよ……。
あまりのお洒落さに萎縮している。お洒落と言えば今夜本当は家族旅行で東京湾をディナークルーズする予定だったけれども、台風が直撃するということで中止になった。ヴィシソワーズ失敗である。JR東日本も18時で運転中止、近所のマルイも17時で閉店、みんながみんな台風に備えて一斉に店じまいしていた(昔はどこもこんなに潔かったっけ? すごく良いことだと思う)。
昨日は草津に行っていて、草津熱帯園に行ったり温泉落語を聞いたり、あと湯もみショーを見たりしていた。
草津を象徴するものといえば中心部でもうもうと湯気をあげている「湯畑」だが、あれは要はお湯を冷ますための装置らしい(湯の花を採取するという目的もあるらしいけど)。湯もみだって華やかに歌ったり踊ったりしてるけど、要はお湯を冷ますための作業だ。「めっちゃ熱いお湯を冷ます」というだけのことをここまで盛り上げられるなんて……と、両親が湯もみ体験をしているのを眺めながらしみじみ驚いた。硫黄臭い熱湯がいきなり吹き出てきたらもう少しは戸惑わないだろうか。ピンチをチャンスに変えすぎである。
なんなら「お湯で卵ゆでてみました!」「お湯の湯気で饅頭を蒸してみました!」など、みんなお湯が沸くというところからアイディアを広げすぎだと思う。郡上八幡に行ったときにも、「水がめっちゃきれい」ということをめちゃくちゃ感謝しているところだなと感じ入ってしまったのだけど、ここも「お湯めっちゃ湧く」ということを感激しまくっている。
草津に向かう高速バスの窓から、何でもない小川のほとりに小さな祠が建っているのもみかけた。ほんとのところは知らないけど、やっぱりあれも「水マジ感謝!」ぐらいの気持ちで出来たんじゃないかなって勝手に思っている。そういうぐらいのパッションで、祠は建ちうると思う。
私もそういうパッションに負けず「皿を洗った」「風呂に入った」ぐらいの規模の功績を日々全力で褒め称えたい。私の心のなかの草津を盛り上げたい。そういえば去年? おととし? ぐらいに先輩が「二度寝音頭」というのを編み出していて、あれは二度寝してしまううっかりさと、そうはいってもあらがえない気持ちよさを端的かつコミカルに表していてすんごく面白かった。
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お湯といえば、湯畑の湯気をぼんやりと見ていたら、湯気のかたまりが頭上でエクトプラズムみたいにもわもわ漂ってからふっと消える瞬間があり「お湯に挨拶をされる」というシチュエーションがあるならあんな感じだろうなと思った。ただ、お湯が何を言いたいのかはさっぱりわからなかった。カメラばっかり構えていて、受信するアンテナが足りてなかったなと反省している。